「国際的な経済制度」の仕組み~EU・CPT・IFM~

皆さん、こんにちは!「社会人先生」です。今日も楽しく公民を学んでいきましょう。

人、モノ、お金、そして情報が国境をこえて地球規模で広がることをグローバル化といいます。現在、日本は国内総生産(GDP)でドイツに抜かれ世界4位となりましたが、私たちの生活は世界中の国々と深くつながっています。

1か国だけでは解決できない経済や環境の課題が増えている今、世界を支える「ルール」や「仕組み」を知ることは非常に大切です。今回は、ニュースでよく聞く「IMF」や「WTO」から、最新の「経済安全保障」まで、国際経済の最前線をスッキリ解説します!


1. 世界の「お医者さん」と「銀行員」?IMFと世界銀行

第二次世界大戦後、世界経済を安定させるために二つの大きな組織が作られました。これらをまとめて「ブレトン・ウッズ体制」と呼ぶこともあります。

国際通貨基金(IMF)

経済危機に陥った国にお金を貸し出し、世界全体の通貨や金融の安定を守る「経済のお医者さん」のような役割です。為替相場の安定を図ることも大切な仕事です。

世界銀行

発展途上国のインフラ整備(道路や発電所作りなど)のために、長期的な資金を貸し出す「経済の銀行員」のような役割です。正式名称は「国際復興開発銀行(IBRD)」といいます。

豆知識:本部はどこにある?

IMFと世界銀行の本部は、どちらもアメリカの首都**ワシントンD.C.**にあります。さらに、IMFのトップ(専務理事)はヨーロッパから、世界銀行のトップ(総裁)はアメリカから選ばれるのが長年の慣例になっています。


2. 自由な貿易を目指して!GATTからWTOへ

国どうしがモノを売り買いするとき、輸入品に高い関税をかけたり、輸入量を制限したりすると、貿易がスムーズに進みません。これを防ぎ、自由貿易を推進するために作られたのが次の仕組みです。

  • GATT(ガット):1947年にできた「関税および貿易に関する一般協定」です。あくまで「協定(約束事)」でした。
  • 世界貿易機関(WTO):1995年にGATTを発展させて設立された国際機関です。モノだけでなく、サービスや知的財産権の貿易もルール化され、違反した国への制裁措置など、より強い権限を持っています。

3. 【WTOの課題】決まらないルールと地域主義

現在、WTOは大きな壁にぶつかっています。

  • 意思決定の難しさ:WTOは全加盟国の合意(コンセンサス)が原則です。しかし、加盟国が増え、先進国と発展途上国の意見が対立するため、新しいルール作りが10年以上も足踏みしています。
  • 地域主義の加速:WTOでの話し合いが進まないため、特定の地域や国どうしで個別に協力する地域主義の動きが強まっています。

4. なぜ「チーム」で協力するのか?

世界中の国々は、互いに助け合う相互依存の関係にあります。すべてのものを自国で作るのは難しいため、得意な産業に力を入れ、苦手なものは他国から輸入する国際分業が行われています。

この結びつきをさらに強め、経済や外交で協力し合う仕組みが地域主義です。


5. ヨーロッパの巨大チーム「EU」の正体

地域主義の最も進んだ形が、ヨーロッパ連合(EU)です。

なぜEUを作ったのか?

  • 平和のため:二度とヨーロッパで悲惨な戦争を繰り返さないため。
  • 対抗するため:1カ国ではアメリカや中国、日本などの経済大国に立ち打ちできませんが、多くの国が集まれば世界最大級の経済力を発揮できるからです。

加盟するとどうなる?

EU内では、まるで1つの国のように自由な活動が認められています。

  • モノの移動関税(輸入品にかける税金)がかからないため、貿易が活発になります。
  • 人の移動:パスポートなしで国境を越え、好きな国で働いたり住んだりできます。
  • お金の共通化:多くの国で共通通貨ユーロが導入されています。

豆知識:ユーロのコインは「裏」が違う?

共通通貨ユーロの「表」のデザインは全カ国共通ですが、実は「裏」のデザインは発行した国によって独自の絵柄(国王の肖像や有名な建物など)が採用されています。旅行に行ったときは、どの国のコインかチェックするのも楽しいですよ!


6. 【EUの課題】チームゆえの悩み

良いことばかりに見えるEUですが、深刻な課題も抱えています。

  • 経済格差:ドイツのような豊かな国と、財政難に苦しむ国(ギリシャなど)との差が激しくなっています。
  • 連鎖する危機:1カ国の借金問題(債務危機)が、共通通貨ユーロを使っている他の国々の経済にも悪影響を及ぼしてしまいます。
  • 離脱の動き:こうした不満から、2020年にはイギリスがEUを離脱するという大きな出来事も起きました。

7. 進化する巨大な約束「CPTPP」とは?

こうした動きの中で、日本も参加している重要な枠組みがCPTPP(TPP11)です。

これは「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」の略称です。

単に関税をなくすだけでなく、ネット通販のルール、労働環境、環境保護など、非常にレベルの高い自由化を目指しています。アメリカが離脱した後、日本が中心となってまとめ上げたことで、世界の注目を集めました。

8. 世界に広がる地域主義のリスト

ヨーロッパ以外にも、世界にはたくさんの「チーム」があります。テストによく出る略語を整理しましょう。

アルファベット正式名称(日本語)特徴
EUヨーロッパ連合経済・政治で深く統合。
ASEAN東南アジア諸国連合東南アジア10カ国。日本との結びつきも強い。
APECアジア太平洋経済協力会議日本、アメリカ、中国など環太平洋の広い協力。
TPP11環太平洋経済連携協定農産物や工業品の関税をなくす自由貿易の約束。
AUアフリカ連合アフリカ諸国の平和と発展を目指す。
USMCA米国・メキシコ・カナダ協定北米3カ国の経済協力。

9. グローバル化の影。求められる「経済安全保障」

経済のグローバル化によって、私たちは安くて便利な生活を手に入れました。しかし一方で、新たなリスクも見えてきました。

例えば、半導体や重要なエネルギー、薬の材料などを特定の国に依存しすぎると、その国との関係が悪化したり紛争が起きたりしたときに、私たちの生活が止まってしまいます。

そこで今、自由貿易を進めつつも、国民の生活に不可欠なものを確保しようとする経済安全保障の考え方が非常に重要視されています。


10. 基礎用語の確認問題(5問)

【問1】 通貨の安定を図り、経済危機に陥った国に融資を行う国際機関を何といいますか。

【問2】 発展途上国の開発のために長期的な資金を貸し出す、国際復興開発銀行の別名は何ですか。

【問3】 GATTを発展させ、1995年に設立された、自由貿易の促進を目的とする国際機関は何ですか。

【問4】 日本も参加している、環太平洋地域の11か国による高いレベルの経済連携協定を何といいますか。

【問5】 重要な物資の供給網(サプライチェーン)を守るなど、経済面から国の安全を守る考え方を何といいますか。


11. 基礎用語の確認問題の答え

【問1】 国際通貨基金(IMF)

【問2】 世界銀行

【問3】 世界貿易機関(WTO)

【問4】 CPTPP(TPP11)

【問5】 経済安全保障


12. 入試に出る記述問題

【問題】

近年、WTOのような全世界的な枠組みでのルール作りではなく、特定の国々の間でFTAやEPAを締結する動きが活発になっているのはなぜか。WTOの意思決定の特徴に触れて説明しなさい。


13. 答え

【解答例】

WTOでは全加盟国の合意を原則とするため、先進国と発展途上国の利害対立により新しいルール作りが難航しており、より柔軟で素早い合意が可能な特定の国・地域間での連携が優先されているため。


14. まとめ

  1. 世界はグローバル化により、互いに支え合う相互依存国際分業の関係にある
  2. IMFは通貨の安定、世界銀行は途上国の開発を支援する役割を持つ
  3. WTOは自由貿易のルールを管理するが、合意の難しさから地域主義(EUやASEANなど)の動きが加速している
  4. CPTPPのように、関税だけでなくデジタルや労働環境まで含めた高度なルール作りが特定の国どうしで進んでいる
  5. グローバル化の進展により、重要な物資を守る経済安全保障が国家の大きな課題となっている
  6. 私たち主権者は、世界経済のつながりを知ることで、物価変動や将来の産業のあり方を考える必要がある

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